隠された現実
となりのトトロに隠された現実は、あまりにも悲しい現実です。結核の療養所に入院中のお母さんは病死、メイはお母さんを追って水死、もしかしたら、お姉さんのサツキも死んでしまっているのかもしれません。
サツキとメイのお母さんは手の届かない場所に逝ってしまったのです。お母さんの所へは、もはやこの世には存在することのないネコバスによってしか行けないのです。
ネコバスとは、この世とあの世を往来することのできる乗り物です。そして、お母さんに逢うことのできるネコバスに乗るには、サツキもメイも一度この世で死ななければならないのです。
そして、サツキとメイが奔放に感情を出しているのに比べて、お父さんは不思議に冷静です。声を担当した糸井重里さんの淡々とした口調や、考古学の先生ということも関係しているのかもしれませんが、何よりも重大な秘密が隠されているように感じます。
つまり、お父さんは妻だけでなく、2人の可愛い娘をも失ってしまっているのではないでしょうか?それであれば、こんな悲惨な現実はありません。
そんな悲しい現実を直視できる子供たち(観客)はいないでしょう。救いようのない現実を背負ったまま、この世に1人取り残されてしまったお父さんが「となりのトトロ」を作ったのかもしれません。
お父さんは、トトロもネコバスも信じている。妻もサツキもメイも元気で生きていることを信じている。お父さんの信じる心が「となりのトトロ」を素晴らしい作品にし、悲惨な現実を完璧に覆い隠しているのではないでしょうか?
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