母体回帰

となりのトトロという作品の表層場面だけを理解している方が大半だと思います。サツキとメイに同化した視点から描かれているものは、サツキとメイのお母さんが約束の土曜日に退院してこなかったのは、ただ単に“風邪をひいた”からで、メイは迷子になってしまっただけで、川で見つかったサンダルはメイのものじゃなくて、サツキとメイの想いはトトロとネコバスによって実現され、すべてがハッピーエンドに終わるというものです。

しかし、となりのトトロが20年以上にわたりロングセラーを続け、大人にも充分に魅力的な作品になっている理由は、作者である宮崎駿さんが、作品の深層で表現した救いようのない悲しい悲しい現実をしっかると描いているからだと思います。
そして、となりとトトロというファンタジー作品であり、ファンタジーであるがゆえに“実は母親は死んでいる”などと宮崎駿さんは口が避けても決して言わないのです。

となりのトトロは、構成や表現テーマなど宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に非常に良く似ていると思っている方も多いと思います。宮崎駿さんが、どこまでそれを意識しているのか解りませんが、死と再生を母体回帰という視点から描いた作品だと思っています。

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